文章の書き方講座〜実践編〜

1、 初心者に向けて

 入部初期に行った書き方講座で言った通り、文章の書き進め方には3種類ある。
@:何を書くのか・どう書くのかなど細部に至って予め決める。自分が轢いたレールに沿って電車を走らせる方法。
A:プロットなどは全て頭の中に入れ、思うがままに書き進む方法。
B:@とAの中間の方法

@は特に初心者に推奨したい書き方と考えている。小説を書くには、物語の中心となる事柄を考えているだけではいけないからだ。
Aは確かに気分が良いし、進む時は早い。だが、思うとおりにならなかったとき執筆意欲が著しく低下し、書きなれていない者はそこでその物語を書くことを中断、もしくは諦めることさえある。これは初心者には実に危険なことと言える。
 Bを取るのは自由だが、これも思うとおりに書けなかった時にAと同じ症状が現れる。リスクを孕んでいることは言うまでも無いだろう。
 では、何故執拗に@の方法を推奨するか。それは、初心者が小説を書く場合、最も難しいと考えられるのが、イベントとイベントの切れ目及び書き出しと言えるからに他ならない。
 執筆の際、話の山場は随分と考えが膨らむものだろう。勿論それが悪いとは言わない。見せ場の無い小説は、余程巧妙に書かねば退屈なものとなる。それを防ぐためにも、読者の心を一気に引き込むようなシーンを作ること、それがより読者を魅せられるように思考を巡らせることは良いことだ。
 だが、その考え方にこそ落とし穴がある。初心者は――あるいはある程度慣れた人であっても――自分が書きたいところのイメージを膨らませるあまり、そこに至る過程を考えることを疎かにしがちである。この特に何でもないシーンを描くことは退屈かもしれないが、そのシーンがあるからこそ小説が小説として在ることが出来るとも言える。
 初心者がA、Bを取ることの危険性がここにある。書きたいところをどう書くかは決めているから早く辿り着きたい。しかし、そこに至る過程に手間取ってイライラしたり焦ったりする。そして書く気力が失われていき、過程を描いている最中に挫折してしまうのである。



2、 どのように書くかを重視

 表題の意味を察することが出来るだろうか。
小説を書くに当たって重要な要素は幾つもあるが、いざ書こうと思う時、どんな話を書くかも重要だが、どう書くかということも重要である。伝えたいこともストーリーも良くとも、書き方がなっていないと素晴らしさが損なわれる。
どのように書くかを体得しておけば、どのようなジャンルでも自分の伝えたいことを読者にわかってもらえる可能性が高まるし、美しい文章に近付くことが出来る。だらしない文章はそもそも途中で投げ出される可能性が高い。
 さて、では小説にはどんな形態があるのだろうか。小説を分類する時、ジャンルで区別することが出来る。
その他に、何人称かによって区別することが出来る。見分け方は簡単。あるキャラの主観で書かれていればそれは一人称小説。第三者の視線から見ているようであれば三人称小説と言う。
中には二人称小説とジャンルされるものがあるが、それは無視しても良い。一人称と変わるところはあまり無い。強いて言うなら、地の文に「君」という言葉を使い、二人で語り合っているように見せている文章のことを言うが、あまりにも例が少なく、文章としても不自然な場合がある。
 では、初心者は一人称と三人称のどちらで書くべきか。
 私は一人称を勧める。理由は簡単で、書きやすいから。自分が語っている風に書けば一人称小説の体裁を取る事が出来る。その意味でお手軽と言える。
 三人称小説は、はっきり言って難しい。自分はカメラに過ぎず、人物の心情を表現する手段が限られる。主な手段は台詞と仕草。  それは一先ず置いておこう。三人称小説を書きたい場合は相談して欲しい。実のところ、私もまだ研究中である。
 それでは、一人称小説の書き方を講じよう。
 一人称小説の原則は、あるキャラになりきることである。勿論視点が切り替わればなりきるキャラも変わる。
 注意したいのが、風景描写である。風景描写は小説の舞台をイメージさせるという重要な役割を持つ。以下の二文を比べてみて欲しい。

 茜色の夕日に照らされ、教室はオレンジに彩られていた。その中で、窓辺にそっと佇む少女がいた。

 教室の窓辺で少女がそっと佇んでいた。

 この二文を見ても明らかだろう。一文目は時刻・天候・教室の模様などが容易想像出来るが、二文目は書かれていること以外は読み取ることが出来ない。これが風景描写の威力である。例え実生活で風景描写を想像すらしないとしても、風景描写を入れることを怠ってはいけない。
 風景描写を入れるだけでも文章が与えるイメージが変わることは理解出来ただろう。



3、 文章を構成する様々な要素

 小説を作る上で何が欠かせないか、挙げて欲しい。幾つ思い浮かぶだろうか。
 キャラ・何人称か・舞台はどこか・ベースはリアルかファンタジーか・ストーリーはどのように展開されるかetc……。きりがないとは言える。
 さて、その構成要素について、一つ一つ作り方を考えていこう。
 先ず、自分は何を伝えたいのかをなるべく考えてほしい。『色付く理由』ならば「病院で起きた奇跡」、『僕と彼を繋いだもの』なら「友情と出会い」など、私はなるべく小説にテーマを設定している。
 これは強制する気はないが、そうしないと底が薄い作品になりがちである。自分の作品が奥深いとは言わないが、テーマを設定せずに書くときよりは良い作品、満足のいく作品を書けるようになったと思う。
 テーマの設定は各人の自由。小説ごとに変えても良い。
 次に何を考えるかだが、実はこれは考えやすいものからで良い。キャラが埋まれば書きたい話もある程度浮かぶし、舞台が決まればキャラの方向性やストーリー展開も限られていく。外堀がどんどん埋まっていくのを感じてもらえると思う。
 ここでは助言程度に留める。まずキャラを考える時だが、ストーリーを考えている場合は、そこでキャラ同士の関連が引き立つように考えるのも良い。十二国記やマリみてを読むと、人物の登場のさせ方の妙を感じないだろうか。例えば、落ち込んだ祐巳を励ますためにどこからともなく出てくる聖、ショウケイの放浪の時に遭遇し、叱咤する楽俊。他の作品にも、登場のさせ方の妙は感じることだろう。ストーリーを見越してキャラに必要な性質を付加することも有効な手段と思う。
 ストーリーを作る時だが、これはさすがにキリがない。だが、どのようなジャンルを書くにしても、読者のことを頭に置いてほしい。書き慣れるまでは大目に見るが、小説がエンターテイメントという側面を持っていることから、やはり読者が読んで楽しかったと思えねばその小説にはまだ修正点があると見た方が良いだろう。もっとも、閉鎖環境を想定し、極端な話、たった一人のために書くというのであればメッセージを込めるとかもありだが。



4、 始める前に

 前述した内容だけで小説が書けるわけではない。小説を書くのは結構大変なことだと認識した方が良いだろう。
 これから自分が生み出す世界の方向性が見えたら、今度は調査に入ってほしい。ファンタジーものならある程度免れる部分もあるが、例えば現代ものであれば調査の必要がある場合がある。
 例えば私がブログにアップしている『色付く理由』では、病院の構造・緊急時の処置・登場人物が罹っている病気などは少なくとも調べておきたいところだろう。恥ずかしながら、私は調査が及んでいなかったばかりに、それらの調査を怠っていた。だから登場人物がどんな病気か言及を避けているし、病院の構造は想像で補っている。最たるものは、誠司が鼻血を出したときの処置。鼻血を大量に出したら普通はなるべく安静にさせるのである。そのような事実を知っている人からすれば、読んでいてとてつもない違和感を覚えるのは必定だろう。少なくとも自分の愚を晒すことにはなる。
 ファンタジーものでも、例えば大規模な戦を仕掛ける場合は、戦術を自分で考える必要がある。軍師は自分の傍にはいない。その為に、軍事関係の本に目を通しておきたい。



5、 書き始める

 では、ようやく書き始める段階である。
 パソコンに向かう、鉛筆を持つ、どのようなものに記録しても構わないが、まずは書き出しを頑張ろう。
 書き出しは読者が一番初めに読むところである。読者がその小説を読むかは、書き出しで決まると言っても良い。短い人では最初3ページ、私なら20ページくらいでこの本を読み進めるか決定する。
 伊都こうへい氏著『第61魔法分隊』という小説などが良い例だろう。その小説では、始まって10ページくらいで主人公が会って間もないヒロインにプロポーズまでしてしまう。

「素敵なお嬢さん。お名前は何とおっしゃるのですか?」
「あの、シュナーナ・グリッグシュテンと申します……」
「素敵な名前だ。惚れました。好きです。結婚して下さい」
『早!』
 という感じのやり取りが交わされるのである。私はこの瞬間に購入を決め、家で最後まで読み通した。私の友人にも同様のことをした。
 このように、書き出しで相手の好奇心を煽れば意外と最後まで読ませることが出来るのである。勿論、途中どうしても耐えられなくて壁に叩きつけることが無いとはいわないが……。
 次に、テンポについて考えよう。テキストオンリーの小説にテンポなどあるのかと言うかもしれないが、ある。簡単なのは、文章の長さでテンポをつけるやり方だ。
 テンポ良くしたほうが良いか、ゆっくり進めた方が良いかは場合によって異なるが、前者は特に戦闘シーンで気をつけた方が良い。多くの場合、戦闘はテンポが良い方が好ましい。軍隊とかなら話は変わるが、剣を切り結ぶ時にテンポが遅いとイライラする。勿論ケースバイケースではあるが。緊張感を漂わせたい場合とかはじっくりと書いたほうが良いと思われる。
 のどかな雰囲気を出したいときは、心持ち文章を長くし、読むのに時間がかかるように仕向けてやると良い。そんな時にも風景描写は結構役に立つ。会話のとき、台詞と台詞の間に入れると時間の経過を効果的に表すことが出来る。
 更に、文章の雰囲気というのも文体で変えられる。堅苦しくしたいのならばちょっと死語になった感がある言葉を使う、難しめの漢字を多用するなどの工夫が出来る。そうすると素人目には格式高い雰囲気が漂うものである。
 対象年齢も考えた方が良いだろう。低めに設定するなら易しい文章にすると良い。ボキャブラリーの豊富さが試される時といえるかもしれない。
 それと、ファンタジーもので気を付けたいのが、説明の機会。ファンタジーという特殊な世界を説明も無しに理解できる人間はいないと見た方が良い。説明の方法には主たるものが二つ。地の文で説明するか、無知なキャラクターに博識なキャラが教えるか。優勢なのは後者だと思われる。
 ファンタジーものの流派の中で、学園ものとか非日常ものがある。この二つの場合、日常のパートも重視しなければならない。いかに非日常の世界に暮らしていようと、主人公には日常に身を置く瞬間がある。その場面を出しておかないと、ただのファンタジーとは大差ないように見える。いっそのことこてこてのファンタジーにした方が良いだろう。日常と非日常が繰り返す様を見たければ『魔法先生ネギま!』を見るのも良い。




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